マラソンと不整脈(2010.5) (2012.5追記)



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マラソンと不整脈
あまり参考にはならないかもしれませんが、同病の方に向けて書いておきます。
あくまでも私の経験、素人が書き綴っただけのものですので細かい間違いなどはご容赦ください。
また、脚の故障などと違って生命に関わることですので、心当たりのある方は自己診断はせずに、必ず医療機関できちんと検査を受けてください。


40代も終盤となりましたが、特に健康診断では問題もなく過ごしていました。
毎年5月頃に健康診断を受けるのですが、昨年(2009年)も問題なく終わったのですが、その数ヶ月後から脈が飛ぶことに気がつきました。
脈が飛ぶというのは、
トン  トン  トン  トン  トン  といったリズムが
トン  トン      トン  トン  といった具合に、一回分無くなります。

また、 トン  トン   トトン      トン  といった狂いもあります。
おおむね、一分に一回程度と、結構な頻度です。
別に痛くもないし動悸もしないし、ただ、なんとなくおかしいなぁと思って脈拍を見てみたら飛んでいることに気がつきました。
気づいたのですが、特に痛みもないしそのうち検査しなきゃと思いながら今まで通りマラソン大会に出続けていました。

不整脈とは、文字通り脈が整わないことです。
大別して脈が速くなる頻脈、遅くなる除脈、リズムが乱れる期外収縮に分かれますが、ランナーは心拍機能が鍛えられているので、比較的脈拍は少なくなることが多いそうです。
私も過去に心電図で洞性除脈と指摘されたことが何回かありますが、ランナーにはよくあることと言われて正常扱いでした。
今回の場合、リズムが狂う期外収縮で、原因が心室というところに起因する心室性頻発性期外収縮で要精密検査(ホルター心電図と心臓エコー)と判定されました。

健康診断では最後に医者から結果説明を受けて終了するのですが、医者から不整脈で要精密検査と言われて「あー、そういえば脈が飛んでいたっけ…」と思い出しました。
正直、この時点で大会からは引退だと覚悟しました。
妙な話ですが、なぜかホッとしたのを覚えています。
もう走らなくていいんだ、なにか大きな荷物を降ろした気持ちでした。
ただ、ダイエットの為のジョグまで禁止されたら辛いなぁ、走れないならなにか他の運動は無理かなぁ、全面運動禁止は嫌だなぁ、とは思っていました。
8月の北海道マラソンはキャンセルしようか、引退レースはどこにしようか。
とりあえず6月の喜多マラソンは強硬出場することだけは決めていましたが、北海道は悩みました。
北海道はキャンセルして大田原、勝田、荒川で引退かな。
そこまで絵を描いていました。


それはともかく、まず検査をして、心臓自体に問題があるのか、危険な不整脈なのか、運動を禁止すべきか、などを診断して貰わないとはじまりません。
それによって、治療の要否、最悪の場合は手術とか運動禁止とかになるでしょう。
健康診断を受けた医者でも検査はできるのですが、近くの医者で受けた方がなにかと楽だろうと思って、とりあえず会社に戻って、ちょうど風邪を引いていたので会社近くの医者に相談しました。
残念ながらその病院では検査はできず、大学病院を紹介するとのことでしたので断りました(大学病院は嫌い)。
なんとか近所の病院で検査してくれるところを見つけましたが、循環器の医者が週一回しか来ないこともあって仕事の日程調整が面倒でした。

検査の順番ですが、
医者に行ってホルター心電図装着
 ↓
24時間後、ホルター心電図を外しに医者へ
 ↓
(循環器専門医がその心電図を解析(医者に行く必要はない))
 ↓
解析が終わってから心臓超音波診断(エコー)

と、最低三回は行かないといけません。

最初のホルター心電図という検査ですが、マッチ箱ぐらい(万歩計程度)の心電図を24時間つけて、不整脈の頻度や出る時間帯などを記録する検査を行います。
検査中は胸に電極を付けているのでシャワーも風呂もダメです。
運動も不可ですが、そもそもシャワー禁止なので運動する気にはなれないけど。

まずホルター心電図の装着ですが、いくつか説明を受けてから胸に4カ所電極を付け、心電図本体もお腹に貼り付けます。
続いて医者がスタートスイッチを押して、仰向けに寝た状態で1分、右を下に寝た状態で1分、左を下で1分、座って1分、座って上体を伏せて1分、立って1分と、姿勢を変えた上体の心電図を記録します。
病院での作業はこれで終わり、あとは帰って普通の生活(風呂と運動以外)をするだけです。

心電図本体には電源ボタン(触らないこと)とイベントボタンがあり、動悸を感じたときなどはイベントボタンを押すとそれが記録されて、解析の役に立つそうです。
付けた印象ですが、胸の電極は意外と気にならず、それよりヘソ上の本体が邪魔なのと、本体の落下防止に首からヒモでも下げているのが、 ちょっとうっとうしい。
あと、うつぶせになると本体を圧迫するので避けた方がいいかもしれません。
(イベントボタンを押してしまう危険があるのと、電源ボタンを押してしまったら大変。検査が中断してしまいます。)
記録シートも渡され、動悸を感じたときや食事などをした時の時間を記入することになっています。
これは解析の時の参考資料になるそうです。

私は風呂に入れないのが嫌で、夕方シャワーを浴びてから医者に行ってホルターを付けて、翌日夕方に外しに行きました。
こういった自由が利くのは近い医者のメリットです。
翌日の同じぐらいの時刻に外しに行きますが、 ちょっとした問診をしながら外すだけでした。
検査費用は5310円でした。

この後、24時間分の心電図(折れ線グラフ状のもの)がプリントアウトされ、循環器の医者にデータと共に渡されて解析されるわけですが、それは医者の仕事なので私はいる必要はありません。
医者によってはエコー検査が先かもしれませんが、私はホルター心電図の翌週にエコー検査を受けました。
その病院では循環器の医師が週一回しか来ないので、医師が来る前日までにホルター検査を終えておいて、来てからそれを解析して、翌週ににエコーという流れでした。

翌週受けた心臓エコー検査は、超音波で心臓の動きを見るもので、痛くも痒くもありません。
上半身裸で左を下にして横になり、ジェルを塗ったセンサーで心臓のあたりを探ります。
機械の置き場所の関係で、残念ながら自分の心臓の画像を見ることはできませんでした。
検査は10分ぐらいで終わり、その後に医師から結果を言い渡されました。

まずホルター心電図の結果ですが、主に心室性期外収縮が24時間まんべんなく出ており約4700発、上室性期外収縮が270発程度、合計で5000発弱。
(ちなみにランナーらしく24時間の合計心拍数は8万台前半と、やや少なめでした。)
不整脈は数よりも危険な不整脈の存在が問題だそうですが(二連発など)、私は心配ないそうです。
エコーの結果も全く問題なく、心臓の機能には異常はないとのこと。

じゃあ、なんで不整脈が出るかと言えば、例えば心臓の筋肉が傷ついたとかで、そういう回路ができてしまったため、と言われました。
なぜ回路ができたかは不明で、自然に治ったり悪化したりもするそうです。

結論としては、マラソンも含めて今まで通りの生活でよい、自覚症状が出たり来年の健康診断でひっかかったら、また検査しましょうということで、経過観察となりました。
最初に不整脈と告げられた時点でレース引退を覚悟したので、あっけない幕切れでした。

不整脈を抑える薬はあるそうですが、副作用として心臓自体の動きを抑制することと、数は減っても危険な不整脈が増える可能性があるので、私の場合は服用はすべきでないとのことでした。

一応、 無罪放免、いや、執行猶予か保護観察か。
ちなみに検査費は2860円でした。

ここで終了と思ったのですが、家に帰ってから運動負荷心電図の必要性を聞き忘れたのを思い出しました。
まあ、その病院では階段昇降式の負荷心電図しか受けられないので、トレッドミルとか自転車タイプの負荷の高い心電図は別の病院に行くことになるのですが。

翌日、健康診断を受けた病院に相談してみたのですが、そこも階段昇降式の運動負荷心電図しかやっていないそうで、ホルターとエコーで問題ないなら不必要じゃないですか、と言われました。
でもランナーですから、責任としてきちんと検査を受けようと色々さがしたところ、某団体の病院でやっていることが分かりました。
普通の大学病院ならたいがい受けられる検査なのですが、大学病院は待ち時間が長いから…。

某団体の病院に予約して、まず初回の日程を決めるのに一苦労(医者の都合と私の仕事の都合で)。
ようやく予約を取れた日に行ったけど問診だけで終了、運動負荷試験の日程は後日電話で予約しました(会社で調整しないと休めない日だったので、その場では決められなかった)。
日時は二週間後、それしか日程が合わなかった。
もう最初の宣告から一ヶ月以上経過しており、宙ぶらりんの状態は精神的に辛い。
引退なら引退で、早くすっきりしたい。


6月下旬、ようやく検査日になりました。
指定通り午後2時前に行きましたが、思ったよりも待たずにテキパキと進めてくれました。
はじめて行く病院で高級人間ドッグなどもやっているので、 施設も看護士さんも奇麗ですw。
そんな高級ドックをやっている場所なので費用が心配でしたが、結果的には最初の問診が810円、運動負荷検査は2770円と普通の料金でした。

運動負荷心電図検査ですが、まず身長・体重・体温を計り、頭痛その他がないことを確認。
検査室に呼ばれて着替えますが、上半身は裸(女性は検査儀を着る)、下半身は病院が用意したショートスパッツみたいなのを履きます。
靴も体育館履きのようなものを履きます。超懐かしい靴です。
身体のあちこちに電極を付け、腕には血圧計、腰にも機械を取り付けて、体中がコードだらけ。
そして自転車をこぎますが、なかなかリズムが合わない。
早すぎてもダメだし、遅くては意味がない。
自分の心臓の音と、リズムを刻む音が両方聞こえるのと、リズム感がないのでこぐスピードが難しかった。
1分ごとにペダルが重くなり、計5分程度、距離は2km程度だったと記憶しています。
時々血圧計がプシューと音を立てて計測していました。
最後まで力を出し足りないぐらいの負荷で検査は終了しました。
(まあマラソンで鍛えているから、この程度の負荷では汗もかかない。)
それでも心拍数は148まで上がったようです。
高いか低いか判断できませんが、ちなみに平常時は60前後だったようです。

着替えてからしばらくして結果説明を聞きましたが、全く問題ないとの診断、マラソンも含めて全て今まで通りでかまわないとのことです。
原因は不明、服薬治療も不要。
あっさりと終了しました。
やれやれ、これで全ての検査が終わって一応は無罪放免。
また来年も不整脈と言われたら、ホルターだけでもとるかなぁ。
毎年検査フルコースをする必要はなさそうですので、それは来年医者と相談します。


二軒の医者で問題なしと言われたので、堂々とレースを続行できます。
正直、ドクターストップがかかったらマラソンとは距離を置くつもりで、その方が気が楽な面もあった(昨今のマラソンブームも辟易だし)のですが、全面運動禁止とか、程々にレースを楽しんでください、などという最悪の結果を回避できたのは嬉しいです。
私にとってレースは全力を発揮する場所、ほどほどで楽しむようならば出る意味がない。
俺のレースはファンランじゃない。適度など、ありえない。


原因は謎ですけども、ちょっと気になる点があることはあります。
それは仕事上のストレスと、糖質制限。
両方とも偶然の一致かもしれませんが、時期的には一致します。
とにかく悪化するか現状維持か治るか、来年までのお楽しみとなりました。
これからも今まで通り、一つ一つを大切に走って行きたいと思っています。
そうすれば、いつドクターストップがかかっても悔いは残らないでしょうから。



(2012.5追記)
不整脈の診断を受けた年はいつも通りのシーズンでした。
記録的には低落傾向のままでしたが、たぶん不整脈との因果関係はないでしょう。
糖質制限ですがその後は止めたり再開したりしていますので、こちらも因果関係は不明のままです。

この翌年の健康診断の心電図では相変わらず不整脈が見られ、ただし回数がだいぶ減ったようで心室性散発性期外収縮と、頻発性から散発性に格下げとなりました。
そのおかげか再検査の指示もなくて要観察(つまり来年まで放置)となっていました。
たしかに脈が乱れる回数はだいぶ減ったのは感じていました。

さらに翌年(2012年)の健康診断では不整脈は全く消えていました。
そういえば脈の乱れを感じたこともなくなっていたけど、いつ消えたかは不明です。
ちなみにこの年は絶好調で、久々に自己ベストを更新(フルもハーフも)していますが、まあ不整脈との関連はないような気がします。
それよりもフォームとか練習の質とか体重とかがタイムに影響していると思います。


仕事のストレスは相変わらずですが、多少は軽減したというか慣れたような気がします。
また、経済的な面での心配も薄れてきたりなど、精神面では不整脈発症時よりいい方向にはなっていますので、多少は影響していたのかもしれません。

でも結論としては医者の見立て通り原因不明のままです。
ですから、再発防止もできなきゃ同じ悩みを抱えるランナーにアドバイスもできません。
ただ言えることは、マラソンで死んでも本望であっても、死ぬためにマラソンをしている訳ではありません。
私はマラソンで死んでも本望ですが、何らかの病気を抱えたままそれを甘く見てそれが原因で死んだ場合、死ぬ瞬間に後悔するでしょう。
足の怪我程度なら、命までとられることはありません。
でも心臓は死と隣り合わせです。
なならかの異常を感じている、あるいは自覚症状はなくともそう診断された場合は、必ず精密検査を受けて医師の指示に従って治療するなりマラソンを諦めるなりして下さい。

死ぬために走るのは邪道、今際の際に後悔するのは自分ですから。


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