シューズインプレ NIKE ズームフライ3
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シューズインプレ NIKE ズームフライ3 インプレ1回目

(2020.2.29 追記しました) こちら
(2021.12.26 さらに追記しました) こちら



シューズインプレシリーズ第一弾、NIKEのズームフライ3のインプレです。

シューズのスペック(素材や宣伝文句)などは書きませんので、すみませんが各自で検索して下さい。
5時間台からサブ4、最速でも3.5あたりの人に向けての情報提供です。
うんと速い人には参考にならないと思います。
個人的な感想ばかりになるので、公平な感想とかは期待なさらずに。
いろいろ偏った情報です。


私のスペックですが、私の直近のベストが3時間40分、マラソン歴は15年以上、シューズはアシックスとミズノばかり愛用しています。
最近は平日のジョグにはアシックスGT2000、レース用はアシックス ゲルフェザーグライド4を使っています。
以前はレース用にミズノ イダテンを愛用していましたが、その頃は3時間半を切れていました。
平日ジョグは安くて厚めのシューズ(アシックスならGT1000か2000)を愛用していますが、特にこだわりはなく、このレベルのシューズでアシックスかミズノで安いものを見つけたら 買っておく感じです。


さて、NIKE ズームフライ3を買ったのですが、まずはきっかけからです。
最近の厚底ブームに乗っかろうとNIKEの厚底の中級向けを幾つか試してみました。
まず試したのがペガサスターボ(AJ4114-400 26.5cm)、定価19440円(税8%込み)です。
右222g 左218gと軽め。
しかしソールの形と4cmの厚さと柔らかすぎるクッションが合いませんでした。

懲りずに試したのがナイキ ズームフライ フライニット(AR4561-005) 26.5cm 定価17280円(税8%込み)です。
これは今回紹介するズームフライ3の前身といっていいようです。名前は違いますが。
右240g 左237gとやや重めでした。
しかし踵のホールドが甘く、厚底で後ろが高くて、ふくらはぎに負担かかる気がしたのと、スピードにも乗りにくい感じがしてこれもダメ。

それでも懲りずにナイキ ペガサスターボ2(AT2863-300 26.5cm)、定価19800円(税10%込み)を試しました。
(消費税が10%に上がりました)
右210g 左212gと軽め、MINATOシティハーフで使ってみたのですが右足の甲が痛く、擦りむけて血が出てました。
レースのタイム的はまあまあでしたが厚底のメリットは感じず、そもそも出血する時点でダメ。
もう厚底は向いていないと諦めることにしました。


しかし、ここで大きな転機が訪れました(と、勝手に感じました)。
2020年1月のハーフマラソンで、久々に1時間40分を切れたのです。
自己ベストの32分には程遠いとはいえ、ここ数年は45分が精一杯でしたので大きな変化でした。
同月末のフルマラソンでは3時間40分、これまた最近は4時間を切れなくなりつつあった(良いときでも3時間50分が遠い)私にとっては、このタイムは本当に久々のいい数字だったのです。
2ヶ月前のフル(2019.11)が3時間55分でしたから、季節的に走りやすくなったことを考えても劇的な変化です。
これは、いろいろ頑張っていたフォーム改善が実り始めたにちがいない。
それなら、もう一度厚底を試す価値があるかもしれないと、スケベ心がまた出て買ったのが今回紹介するズームフライ3なのです。




ナイキ ズームフライ3 BV7778-100 ホワイト/ブルーヒーロー 26.5cm
定価17600円(税10%込み)、NIKEネットショップで14080円(セールだった)
右256g 左256g

まずは外観を見つつ、シューズを概観しましょう。
厚底なのがわかります。

最近話題独占の「ピンクのシューズ」は正式には「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ Next%」と言います。
従来のシューズとの劇的な違いは、上級者は薄くて軽いシューズを履くという常識を覆して、ズームXという軽くて柔らかい素材で厚底にして、さらにカーボンファイバーでできたプレートを中に埋め込んでいることです。
ズームXが衝撃を吸収して内蔵のカーボンプレートで推進力を得るこのシューズで世界中が新記録続出となりました。
東京五輪の出場権をかけたMGCでも、ピンクのシューズ一色といった状態でした(特に男子)。
水泳のレーザーレーサー騒ぎを彷彿させます。
世界陸連は慌てて「厚底は4cmまで、プレートは1枚だけ」というルールを作りました。

ズームフライ3はこのNext%に非常に良く似た構造です。
残念ながら私はNext%を履いたこともないし、履きこなせもしないでしょう。
(あれは概ねサブスリー以上のシューズのようです)
ズームフライ3はズームXの代わりにナイキリアクトフォームという素材を使い、その中にカーボンファイバープレートを埋め込みました。
Next%の一般向けがズームフライ3と言っていいかどうか知りませんが(なにしろ履き比べたことがないから)、Next%が遠い多くの市民ランナーにとっては興味深いシューズがズームフライ3と言えるでしょう。

私が買ったのはNIKEの公式ネットショップですが、セールだったようで安く買えました。
この色を買いたかったのではなく、値段とサイズで一番安いものがこの色だったのですが、なかなかいい色です。

私はアシックスのレーシングラスト(ゲルフェザーなどレース志向のシューズに採用される足型)では26.5cmがジャストサイズです。 でもレギュラーラスト(GTシリーズのような安全性第一のシューズの足型)では26cm、場合によっては25.5cmを使うこともあります。
アシックスの場合、レーシングラストは細長いのでワンサイズ大きめが丁度いいようです。
ズームフライ3は通販で買ったので安全第一で26.5cmを買いましたが、履いた感じでは26cmでもいい気がします。
つま先が結構余っています。





赤線で囲んだ部分にかかと部分をホールドする素材があります。
しかし、あまり機能していません。
かかとのホールド感は大甘です。
(それが欠点にならないようなのが面白い)

最近のNIKEとアシックス・ミズノの大きな違いが、かかとのホールド感です。
NIKEは相当ルーズです。
というか、NIKEはシューズと足の固定方法が旧来のシューズとは全く違うようです。
アシックスなどはラストをレーシングとレギュラーに分け、さらにモデルによってはナローやワイドも展開するなど、複数の足型を用意しています。
また、アシックスラインと呼ばれるデザインは見た目だけでなく、これが骨格となって靴底とアッパーを一体化させて、シューレース(ヒモ)を締めることでアッパー・足・靴底が一体化し、かかともホールドされます。
(モデルによってはアシックスラインが単なる飾りになっているものも多いけど)

しかしズームフライ3は違います。
ラストは一種類、靴底とアッパーをつなぐ骨格はなく、全体で一体化させています。
住宅で言えば、アシックスを柱と梁で作る在来工法(線で囲う)だとすると、NIKEはツーバイフォーのような面で支える工法のようです。
また、ズームフライ3(その前身のフライニットもそうだったけど)は、かかとのホールド感が大甘。
まるで、かかとでホールドするのは補助的な位置付けとでも言いたいような甘さです。

シューレース(ヒモ)ですが、ズームフライフライニットやズームフライ3はヒモを締めなくても履けそうな感じがします。
小さなキツイ靴下を履くような感覚で、全体で締め付ける感じなのです。
普通、マラソン用のシューズはヒモを締めなければ脱げてしまいますが、ズームフライ3はヒモの重要性が相当小さくなっています。

薄底でかかとも前足部もヒモでしっかりホールドさせるアシックスに比べ、まるで違う哲学で作られているのです。





靴裏です。
一回走った後なので薄汚れていますが、赤線で囲った部分は固めの素材を使っています。
それ以外はリアクトフォームという柔らかい素材でできていて、その中にプレートが埋め込まれているそうです。
白く見える横の部分と、靴裏のNIKEマークがある土踏まずなどの部分は同一素材でできていて、要するに赤線で囲った部分以外はリアクトフォーム一色なのです。

一般的に、シューズはいくつかの素材を組合わせて作ります。
アウトソールには硬い素材で耐久性向上、ミッドソールには柔らかめというのは共通しますが、かかと部分には別素材を埋め込んだりして、軽くて衝撃吸収性もあって反発性もある、二律背反的なことを実現しようと各メーカーは苦労しています。
また、プロネーション(接地時に足が内側に傾くか外側に傾くかの違い)に対応させるために硬度の違う素材を一部に配置したり、ピッチ走法とストライド走法に対応させるためにフラットソールやセパレートソールをシリーズごとに変えるなど、相当細分化されています。
それに対してズームフライ3は単純で、全体が柔らかいリアクトフォームで衝撃を吸収し、接地する部分(写真の赤線内)は固めの素材で耐久性向上、埋め込んだカーボンプレートで反発と、実に単純です。
ひょっとしたら、これから先は細分化されていくのかもしれませんが、まるで違うアプローチです。

同じズームフライ3でも色によってアウトソールが違うようで、私のはご覧のようにかかと部分には妙な模様がついていましたが、黒一色のものもありました。
最後部が白いのはすり減ったからではなく、最初からこういう色です(まだ10kmしか走っていない時点での撮影です)。





汚ねえなぁ。
400kmほど走ったゲルフェザーグライド4との比較です。
(400km使ったとはいえ、新品と比べてミッドソールの厚さに変化はありません)
ズームフライ3はまるでシークレットシューズのように分厚い靴底です。
この厚さは、最近のNext%の快進撃がなければ一笑に付されていたかもしれません。
また、ヒール部分の角度が特徴的で、前足部の角度もカクッと上がっています(わかりにくいけど、母趾球付近でカクッと曲がっている)。
このせいでウオークでは違和感が強かったです。





かかと部分です。
本体はすごく薄い素材でできています。
赤矢印のスポンジでホールドするのですが、ほとんど機能していません。
無くても多分同じです。

ただ、かかとのホールド感が大甘でもさほど問題にはならないのが面白いところです。





見にくい写真ですが、手前がかかと、後ろから靴の中を覗き込むように撮りました。
なにを撮りたかったかというと、シュータンがシューズの横面と一体化しているのです。
なので、履くときは紐を緩めてもするっと足が入らずに、きつい靴下を履くように足をこじいれます。
紐は締めますが、補助的な感じです。

従来のシューズはヒモの締め方でフィット感が大きく変わりましたが、このシューズは紐はあくまでも補助的な感じです。
もちろん締めるべきですし、ちゃんと締めた方がよりいいのは当然ですが、この点も革命的です。





私はかかとのホールド感はシューズの命だと思っているのですが、このシューズにはそれが通用しません。
わかりやすいかと思って裸足で履いてみましたが、汚い足を晒すだけで見やすくはなりませんでした(汗)。
それはともかく、写真の赤部分あたりでかろうじてかかとをホールドしているだけで、青線部分はガバガバです。

追記:
後日履いた印象では、赤部分でもホールドしていない気がしました。
要するにかかとはどこからもホールドされていない印象で、これまでの私でしたら絶対に受け入れないはき心地です。
しかし、走っても問題ないように感じました。



さて、履いた印象です。
まずヒモは伸縮性がなく、あまりいい印象は受けません(問題にはならなかったが)。
一体化したシュータン部分を引っ張りあげながら足を入れます。
サイズ感は、アシックスのレーシングラストよりワンサイズ小さくてもいいかもしれません。
(私なら26cmでもよさそうな感じがします。26.5cmではつま先が結構余っています。)
フィット感ですが、中足部で締め付けて、かかとの下の方(上の写真の赤丸あたり)で支える感じです。
前足部はやや緩めですし、かかとのフィット感は大甘。
相当不安な履き心地です。
(走って問題なかったのが意外)

歩いた感覚ですが、かかと部分の角度がクイッと上がっていることと前足部の角度変化が急なこともあって、妙な違和感を感じます。
それがダメとは言わないけど、違和感はすごく感じました。
そもそもウオーキング用のシューズではないので、まあいいや。
しかし、歩いただけでふわふわ感がすごい。
これがリアクトフォームの柔らかさなのでしょう。

走ってみました。
まずはジョグ、体が温まっていないのでキロ6分44秒と相当遅めです。
この程度の速度では、柔らかさは感じますが可もなし不可もなし。
柔らかいからといって不安定になるわけでもなく、柔らかさで脚には優しいだろうという程度です。

そのまま脚にまかせて走っていると、キロ6分を簡単に切り、5分半にもあっさり届き、5分近くまで飛ばせます。
ただし最近フォームを変えることに成功したということもあるので、ペースアップはシューズだけの手柄とは言えないはずです。
しかし厚底が裏目に出ていないと言っていいでしょう。

8km走ったところでGPSの誤差が大きくなったので一旦休憩しましたが、脚に任せて走った8kmではベストラップがキロ5分09秒、ストライドは106cm。
ストライドは私にしては広めの感じですし、タイムも相当速い。
全てがシューズのおかげとは言えないでしょうし、買ったばかりの興奮も考慮しないといけません。
しかし、この時点で厚底が速度を殺すことはないと感じました。

距離合わせのためにもう2km走りましたが、最後は全力で1kmを走ってみました。
ちなみに、私の1km全力走のベストはもう何年も前に出した4分05秒です。
地図上で測った1kmなので正確な距離かどうかはともかく、当時も今もコースは同じなので、タイムの比較はできます。
先日、練習中に速いランナーに引っ張ってもらった時(勝手について行っただけですが)に4分30秒が出ましたが、これは私的には相当速い数字です。
単独走ではなかなかここまでスピードを出すことはできません。

しかし今回は単独走にもかかわらず、なんと4分13秒と相当な速さを出せました。
ストライドも117cmと、1月のハイテクハーフ(久々に1時間40分切れた大会)のベストラップ(キロ4分20秒)に並ぶ長さ。
レースのときは馬鹿力が出ますが、今日は単独走。
しかも、最初から1km全力走をするつもりではなく、なんとなくやることにしたのにこのタイム。
これはフォームの改善が効いているだけでなく、このシューズのおかげでもあると思うのです。
厚底は足が長くなるのと同じ効果がありますから、それでストライドが伸びたのかもしれません。
あるいはカーボンプレートの反発力が効いたのかもしれません。
少なくとも厚底の柔らかさでスピードが殺されるという心配は、私レベルでもないようです。

感触的にキロ4分ちょいあたりまでなら十分このシューズでいける気がします。
となると、3時間前後までの人でもフルマラソンで使えるかも。

ネックなのが重さで、256gというのはなかなかの重さです。
ゲルフェザーグライド4より10gほど重い。
4時間前後の人にとってはこの重さは気にならないかもしれませんが、3時間半近い人には重めに感じそうです。
それより速い人にとっては、ちょっと嫌な重さでしょう。

今の私はゲルフェより軽いシューズで3時間半に近付きたいという状態なので、この重さはマイナスです。
しかし、この柔らかさはフルマラソンの終盤では大きな武器になる気がするのです。
それだけの異常なほどの柔らかさが、このシューズの大きな特徴ですし魅力です。

5時間を超える人がこのシューズを使うかどうかですが、使っていいと思います。
特に脚を痛めがちな人にとっては良き相棒になるでしょう。
5時間超となると安全第一ですが、この柔らかさなら安全志向のシューズ(アシックスならGTとかゲルカヤノとか)と同じかそれ以上の優しさがあるはずです。
ただ、左右のブレについての安全性は大いに疑問ですので、ブレ由来の故障をしやすい人はやめたほうがいいかもしれません。
いずれにしても、走ってみてスピードを削がれる気がしたらやめておきましょう。
いくらソフトで脚に優しくても、推進力が奪われるようならスタミナを吸い取られるだけでマイナスになるでしょう。


さて、一回目のインプレのまとめです。
ペガサスターボはシュータンが足の甲に当たって出血しましたが、そのような相性の悪さはありませんでした。
かかとの超ルーズさは気にはなったけど実害は(今のところ)なさそうです。
たった10kmではありますが、キロ7分近くから4分13秒まで走った印象としては、カーボンプレートの効果は実感はできなかったものの、柔らかさが速度を削る(推進力を削ぐ)ことはなかったので、これがプレート効果なのかもしれません。
歩いたときに違和感を感じたかかとの角度と前足部の角度ですが、走ったときは全く問題ありませんでした。
心配なのは、以前の私のような悪いヒールストライク、つまりかかとから接地し、接地位置が重心より前なので一歩一歩かかとでブレーキをかけるようなフォームの人です。
こういう人は柔らかさが裏目に出てスピードを削がれるだけな気がします。
もちろんそういった悪いフォームを改善するのが先ですが、そうそう簡単にフォームを変えられない人の方が多いでしょう。
かくいう私のその一人です。
そういったフォームで苦労している人がこういった厚底柔らかシューズを履くと、柔らかさが仇となってスピードもスタミナも奪われるだけの気がします。

おそらくキロ4分台前半で走れる人は、そういった悪いフォームの人はいないか少数派でしょう(フォームが悪いとなかなかそこまで上げられない)。
なかなかそこまで速度が出ない人は、悪いヒールストライクの可能性があります。
そういう人は従来の固めのシューズの方が合っている気がします。

柔らかいとスピードを削がれるのではと心配しましたが、その心配はなさそうです。
また、シューズフィッティングにうるさい私はこのシューズに違和感しか感じなかったのですが、走り出したら気にならなくなりました。
これは、このシューズが万人に合う可能性が高いことを示唆している気がします。
NIKEは公式サイトで、NIKEのシューズは足型を選ばないといったアピール動画を上げています。
Next%を履いているトップアスリートたちの足型(幅広だったり細長だったりしている)を見せ、これらのランナーはすべてNIKEの市販品で記録を出していると自慢げに宣伝しています。
あれが誇張ではないのを実感した気がします。
店頭で試し履きして、かかとがルーズだからやめようといった感じでこのシューズを諦めるのは、もったいない話です。

これまで履いた3足のNIKE厚底シューズとの違いですが、甲を擦りむいたペガサスターボ2はともかくとして、それ以外が合わないと感じたのはかかとのルーズさだけでなく、厚底と(当時の)フォームの相性が悪かったからではないかしら。
当時の悪いフォーム(ヒールストライクで重心の前の方で接地する)は一歩一歩ブレーキがかかるような走り方になり、普通の固さのシューズでもロスになっていたはずですが、厚底の場合はその柔らかさが大きなロスになってスピードに乗れなくなる。
スピードに乗れないから走っても快適さを感じないし、相性の良さを感じないから長距離を走る気になれない。
長距離を走らないから柔らかさのメリットである足に優しい面は実感できず、フォームが悪いからプレートの反発も生かされないため推進力も感じず、悪いイメージしか残らない。
しかも、しつこいけどフィット感はたよりなく、フィッティングを気にする私にとっては頼りないシューズとしか写らない。
もしこのシューズや厚底で柔らかいシューズを履いてスピードに乗れない(スピードが殺される)と感じる人は、まずフォームを確認したほうがいいです。
フォームが速度を殺している可能性が高いのです。

言葉ではうまく説明できないし、そもそもシューズレビューで書くべきことじゃないかもしれないけど、悪しきヒールストライクの改善方法をいくつか。
後ろ足を裁くときに、かかとをお尻にぶつける感じにする。
膝を折るとか足を上げることを意識するよりも、かかとをお尻にぶつける意識のほうがオススメです。
その場で足踏みして、かかとをお尻に当てるエクササイズをしてみて下さい。
ふくらはぎが邪魔でかかとがお尻に当たらなくてもいいのです。
腿を上げるとか膝を折るのではなく、大切なのは後ろ足のかかとが最短距離で前に移動すること。
そのための練習です。
後ろ足を引っこ抜くイメージ、と考えてもいいかもしれません。

もうひとつは、接地するときは「前に出した足が戻ってきて一番速度が乗っている場所」で接地すること。
よく言われる重心の真下で接地と同じですが、真下と言われるよりこのほうが伝わりやすい気がします。
脚が前から後ろに移動するときは、振り子のような軌跡を描きます。
このなかで一番スピードが出るのは、体の真下。
要するに重心位置。
さらに言えば、脚で地面を叩くのではなく、足で地面を踏むのでもなく、振り子の軌跡の最速部で地面を後ろに押し出す感じ。
着地ではなく接地と書いているのもそのイメージを伝えたいからです。
足音がしない接地が一番速くダメージも少ない走法だと思います。

さらに、上半身と下半身が、頭を軸にして反対に回るように走ること、これも骨盤で走るとか腕で走る・肩甲骨で走るなどと同じ意味ですが、重要なポイントです。
この3つを意識すれば大きくフォームが改善される人も多いのではないかしら。


現時点での印象ですが、フルマラソンに使うなら5時間前後の人でも試す価値はありそうです。
(左右のブレによる故障には要注意ですが)
4時間から3時間半の人には、履いてみて速度が殺されないようならぜひオススメします。
3時間半よりも速い人は重さが気になるかもしれませんので、値段が高くて長持ちしなくて不経済ですが、思い切ってNext%を検討してみてください。
ただ終盤に失速するような人は、終盤をこのシューズが助けてくれる可能性があるので試す価値がありそうです。

とにかく、どのレベルの人も試走してみて、スピードが殺される気がしたらやめておいたほうがいいです。


短いレースとの相性ですが、この重さをどう判断するかがポイントかな。
カーボンの反発性が生かせる走り(それなりの速度を出さないと効果がないはず)ができても、重さで相殺されそうな気もします。
このシューズで1km全力走をしてみて、それまでのシューズと大差ないタイムが出せるなら、こいつで走ってみましょう。
レース終盤で脚が終わったりレース後に大きなダメージが残る人も、このシューズを選択する価値があります。
しかし、試走して速度が乗らないようならば、今までのシューズのほうがいいでしょう。

私の場合、10kmまでなら今まで使っていたシューズの中で軽めのシューズ(DSトレーナーとかライトレーサーとか)のほうがいい数字が出る気がしますが、ハーフで履くかどうかは悩みます。
まあ、一度これで10km大会に出てみてから考えようかな。
というか、私はフルマラソン命なので、10kmとかハーフのタイムはフルマラソンへの通過点でしかないのですが。


すでにNext%の次のモデルであるナイキ エア ズーム アルファフライ Next%が発表されています。
これは前足部にズームエアポッドと呼ばれる空気の入った素材(NIKEの十八番ですね)を配置しており、Next%のシンプルさを進化させた形です。
ズームフライ3の後継機種は、同じように前足部にエア入り素材を配置するかもしれません。
しかし一貫しているのは軽量で柔らかい素材の中にカーボンプレートを埋め込むことです。
他のメーカーも厚底だったりプレート入れたりしたニューシューズを出しつつありますが、現時点(2020年2月)では周回遅れの感は否めず、NIKEの一人勝ちです。

私はNIKEのシューズにはあまり縁がなく、さほど好きではなかったのですが、このシューズは気に入りました。
シューズの進化は我々のようなレベルの市民ランナーにも恩恵をもたらしてくれると思います。
次のレースが楽しみです。
今まで味わったニューシューズのワクワク感とは全く違うワクワク感を感じます。
厚底でソフトという今までとは全く違うアプローチが私の脚にどんな効果があるのか、とにかく楽しみで仕方がありません。

もう少し履き込んだら追加インプレを書き足す予定です。
このまま問題なければ、3月の板橋シティマラソン(フルマラソン)で使う予定です。



ここから2020.2.29追記

さて、2回目のインプレを追加します。
その前にこのシューズで走るはずの板橋シティマラソンはご存知の通り新型コロナウイルスで中止、4月の長野マラソンも風前の灯です。
まだ中止発表はされていませんが、現時点では週明けから学校は春休み明けまで(要するに3月いっぱい)休校、ディズニーランドや美術館などはことごとく休止、北海道知事が今週末の外出は自粛要請などもう国がパニックに近い感じなので、たぶん無理でしょう(涙)。
今年は後泊して温泉を楽しむつもりだったのに。

それはともかく、ズームフライ3で再度走ってみました。
まずはジョグで10kmの足慣らし、この時点では速く走れるような要素は感じません。
10kmを最初キロ7分、最後は6分弱、62分44秒でした。
脚に優しいクッション感はありますが、キロ7分から6分前後では特にこのシューズの良さは感じません。

次に10kmを速めに走ってみました。
最初から飛ばすだけの根性もないので、ビルドアップっぽい感じを目指して走りました。
最初の3kmは5分半から5分、それ以降は4分40秒台、最速はラスト1kmの4分半、49分31秒(キロ4分半)でビルドアッップというより7kmのペース走っぽくなりました。
ペースは相当凸凹しましたが、速い人がいるとついて行って、途中から別コースになるのでまた単独走、という感じでした。
ストライドは概ね110cmから115cmでした。
印象ですが、ミッドフット着地が自然にできる気がします。
そのような走りを意識したせいかもしれませんし、このシューズはヒールストライクの人には向かない気が再度しました。
もし走ってみて違和感を感じたら、それはヒールストライクだからかもしれません。
このシューズ、ヒールストライクで走ると相当な違和感があるように思います。
「思います」というのは、わざわざヒールストライクで走ってしまうとせっかく矯正中のフォームがまた悪い方向に戻りそうなので、ヒールストライクは試していないからです。

スピードが乗るかどうかですが、シューズのおかげで跳ねるように走れるという感じはありません。
まだ私にはこのシューズを履きこなせていないのかもしれませんが、練習で10kmを50分切るのはなかなか私的には高めのハードルなので、他の軽め薄めのシューズ(アシックスならゲルフェザー以下の軽さ)と同じかそれ以上の速度は出せることは間違いありません。
また、走った後のダメージは少ない気がします。
脚へのダメージは他のシューズより少ない気がしますし、マメもできにくい感じがします。

ゆるゆるのかかとですが、何の問題もありません。
おそらくハーフまでなら全く問題ないでしょうし、フルでも問題が起きるとは思えません。
中足部あたりでホールドしている程度で、走るごとにかかとがズレるんじゃないかという頼りなさを感じますが、かかとから意識をそらせば忘れてしまう程度で実害は感じません。


追記のまとめです。
一回目のインプレとおおむね同じ印象ですが、かかとのルーズさは前回以上に強く感じました。
ただ、それが欠点にはなっていないので気にしなくてもいいのですが。
たった10kmでしたがスピードを意識して走ったところ、フルかハーフならこのシューズで走ればいい数字が出る気がします。
(3時間40分、1時間40分前後の人ならば)
10kmのような短いレースでどうなのかは、まだ結論が出ません。
薄手軽めのシューズの方が短い距離には向いているかもしれない気もしますが、それは2月の赤羽月例で試してみようと思ったら、なんと赤羽月例まで新型コロナで中止。
レースデビューは秋になるかもしれない・・・。

現時点での結論は、相変わらず私レベルの人には超おススメ、ぜひ試しばきをしてほしいシューズです。



ここから2022.1.9追記

さて、前回の追記から1年半も経ってしまいました。
ズームフライ3を買ってからコロナ禍が始まってしまい、ようやくレースで使えたのは2021年11月。
この間、最初に買ったズームフライ3(26.5cm)に続いて、少し小さくても良いのではと思って26cmを買いました。
前回同様14000円ちょいでした。
ところが前後長はちょうど良いのですが横幅がきつめで、指に負担がかかりそうで練習専用にしました。
NIKEは足形が細長い気がするので、捨て寸は多めでも気にしない方がいいようです。
その後、ズームフライ4登場の噂を聞いて26.5cmを買っておきましたが、もう在庫限りでしたので探すのに苦労しましたが11000円で買えました。
ということで現時点で手元に3足もあるということは、要するにお気に入りってことです。

最初に買った1足目ですが、1200km履きました。
このシューズを買う前から足裏痛が出て、医者に通うほどの強い痛みではなかったけど、たまたま肘痛で整形外科のリハビリに通院していたので、肘痛が治ってからは足裏痛の治療をしていました。
結局、足裏痛は気がついたらよくなっていましたが、治療の一環でインソールに加工をしてもらったのが功を奏したのか、休足したのがよかったのか。
あるいはインソール加工をしてもらったのでズームフライ3ばかり履くことになり、厚底が足裏に優しかったのか。
それはともかく、気がついたら1200kmも使っていましたので、さすがに引退させました。
その後も足裏痛は再発していませんが、以前はゲルフェより薄いヒートレーサーも履いていたので、これがまずかったのかもしれません。
ただフォームもだいぶ改善した(つもり)なので、またヒートレーサーを履いてぶりかえすかどうかは不明です。
今は2足目のズームフライ3 26cmと前から履いているゲルフェザーグライド4を交代で履いています。

さてコロナ禍が一息ついて2年ぶりにレースに出られたのが2021年11月の世田谷246ハーフマラソンですが、すでに1200kmも走った1足目で走るのはもったいない。
かといって26cmの2足目でレースは走りたくない(小さめなのでレースでは怖い)。
で、まだおろしていない3足目をレースでいきなり履いてみましたが、1時間41分弱と2年前より2分ほど遅いとはいえ、良い感じで走れました。
厚底に適応したフォームは体得できていないと思うのですが、普通底のシューズと比べて推進力を吸収されてロスするような気はしません。
そしてダメージは明らかに普通底より厚底の方が少なく、私程度のランナーでも厚底の恩恵は十分に受けられます。
重さも気にならなかったのですが、できればもっと軽い方がいいことはいい。
となると、気になってくるのがトップアスリートが履いているズームXヴェイパーフライNEXT%2です。

NIKEの最高レベルの厚底シューズはズームXヴェイパーフライNEXT%2とエアズーム アルファフライ NEXT%ですが、いずれもカーボンプレート内蔵でズームXという柔らかい素材で作られていますが、 アルファにはエアポッドがあってヴェイパーにはありません。
アルファの方が新しいのですが、マラソンなどではヴェイパーの方が人気があるようです。
どうやら安定感ならヴェイパーの方が上、スピードを出したりペースの上げ下げに対応しやすいのはアルファの方が優れているようです。
ズームフライ3はヴェイパーの下位互換で廉価版・練習用と位置つけられていますので、ステップアップするならヴェイパー。
ただヴェイパーは27000円ほどするうえに寿命は数レースと言われていますので、おそらく寿命は200kmから300kmぐらいでしょう。
練習にはもったいなくて使えません。
実は先月思い切って買っちゃったので、レースで履いたらインプレを書きます。
本稿はズームフライ3ですので、そちらに話を戻しましょう。

1200km走ったとはいえ、10kmをキロ6分台で走るジョグが中心でスピードに乗るような走りはあまりしていません。
最近になって26cmの2足目で1km全力走をやってみたりしていますが、4分20秒が精一杯(シューズではなく私の脚的に)。
なのでインプレはキロ6分台から4分半の範囲での話となるのですが、厚底だから安定性が悪いなどのネガティブなものはなにも感じません。
普通底シューズと比べてマイナス要素はなく、短い距離で速く走っても長い距離をゆっくり走っても、厚底の方が確実にダメージは少ない。
心配していたのは安定感に欠けて左右にブレて故障することでしたが、今のところその心配はありません。
長年愛用しているゲルフェザーグライド4ですが、ズームフライ3ばかり履いて数ヶ月ぶりにゲルフェを履いたら妙に硬く感じました。
それだけズームフライ3がソフトだということでしょう。

ズームフライ3のような厚底でプレート入りシューズが一番力を発揮するのは、おそらく接地時間が短いランナー、要するに速い人だと思います。
私のように接地時間が長くて地面の反発を生かせないランナーは、シューズからの反発力を生かせません。
それを生かすためにはフォームを改善すべきなのですが、そんなに簡単にフォームは変えられません。
ではフォーム改善が終わるまで厚底を履く意味がないのかというと、そんなことはありません。
厚底特有のフカフカ感はダメージを相当軽減してくれます。
それはスピード練習でもハーフのレース(1回だけですけど)でも証明していて、明らかに今までよりダメージが少ないのです。
ただしフォーム改善も同時にやっているので全てがシューズのおかげではない(その証拠に筋肉痛の出る場所が変わってきている)のですが、でも痛む部位は違ってもダメージの絶対量が全く違います。
私の結論は、フルマラソン5時間から3時間半ぐらいまでのランナーにはズームフライ3はお勧めです。
ただ速くなるにつれて重さが気になるかもしれません。
4時間を大きく切る人が10kmなどのレースに使うと、重さが気になるかも。
また5時間を大きく超える人の場合は、ハーフなどペースが速いレースを中心に使うといいのではないでしょうか。
3時間台の人は練習用、4時間前後の人はレースや練習用、5時間付近の人は短い距離のレース用といった使い分けかしら。
3時間台の人は思い切ってヴェイパーフライでレースに出てみると面白そうです(でも値段がね)。
5時間台の人がズームフライ3を練習に使うのは値段的にもったいない気がするのですが、それが気にならないのなら練習でも問題はありません。
ただキロ6分半以上遅い速度なら、GT2000のような従来型の厚目重め安全性重視の方が安全だし安いし、私ならそっちを選びます。

4時間を切るレベルの人でハーフや10kmで思ったよりスピードが出ない場合は、シューズ選びよりもフォームの改善(接地時間の短縮)に注目した方がいいです。
厚底でも薄底でも、ペースが遅い時は地面を踏んだ時の反発は膝や腰で吸収して消えてしまい、推進力には使えていません。
ある速度(私の感覚ではキロ5分あたりからかと)を超えると地面を踏んだ反発を推進力に生かさないと厳しくなります。
その時に厚底のもう一つのメリットである反発力が活かせます。
ところが反発を活かせないフォームの人がある速度を越えようとした場合、接地時間が長いので反発は消えているので筋力だけで走ることになります。
そうなると筋力で作った推進力を厚底が吸い取ってしまい、かえって疲れる気がします。
そういうランナーは普通底や薄底でも地面からの反発力を活かせていないことは同じですが、靴底が薄い分吸収される量が厚底よりは少なく、同じフォームでも厚底よりはスピードに乗りやすいのではないでしょうか。

厚底で心配なのが、厚さゆえの安定感の無さ。
シューズによっては、靴底の素材でオーバープロネーションなどをカバーする工夫をしているものもあります。
厚底にはそれがないので、厚底に変えたら故障する人もいるかもしれません。
その場合はまず故障を治してから元のシューズに戻してみてください。
もちろんフォーム改善で対応できるのならそれが一番ですが、それはなかなか難しい。
(いいコーチでもいれば別ですが)


ホールド感ですが、何度も書きますが踵のホールド感は薄いです。
またシューレースで履くというよりも、靴下を履くように足を入れたらそれで終わり、紐は一応結びますが紐によって足とシューズが一体化する感じはないです。
紐は解けやすいのできっちり結びましょう。
特に小さめサイズをチョイスした場合は結構解けます。
結び方ですが、私はダブルアイレット(ヒールロック)でしたがこのシューズでは普通に結んでいます。

踵ガバガバな感じはすぐに慣れてしまいました。
このシューズで走ったのが大会ではハーフまで(練習では30kmまで)ですが、このルーズなフィット感でもなんの問題もありません。
これにはちょっと驚いていますし、感心もしています。

厚底は万人向けではないのでしょうけど、私程度のランナー(ここ数年のタイムがフル3時間40分、ハーフ1時間41分、10km46分)でも相当の恩恵は感じます。
もっと遅い人でもソフトな接地感がダメージを防ぐ効果は大きいはずです。
もっと速い人は重さが気になるかもしれませんが、練習用なら気にならないのでは。

ヴェーパーフライのような超軽量厚底が私レベルでも恩恵があるかどうかは今後検証してみますが、ズームフライ3は相当広い層にオススメできます。
ただ値段がね・・・。
1万8千円前後という価格は、なかなか手を出しにくい値段です。
店頭で試し履きして自分のサイズ感を掴んでおいて、NIKE公式サイトをこまめに見てセールで安くなったら買うのがいいかな。
耐久性ですが、1200kmはちょっと使いすぎの感じです(写真を掲載しておきました)。
走り方にもよりますが、たぶん800kmは持つでしょう。
私はレース用シューズは600kmぐらい、練習用は800kmから1000kmで交換しています。
それを考えたらズームフライ3の耐久性は他メーカーの安定性優先シューズ(アシックスならGT2000とかの厚目・重めのもの)と同等以上はありそうです。
ちなみにズームフライ4はアッパーのみの変更なので、靴底の耐久性は同じはずです。
(アッパーはシュータンがフライニットになるなどの変更があるため、耐久性は不明)

エビデンスはありませんが、全てを厚底シューズにするのはよくない気がします。
練習用の1足ぐらいは普通底シューズがいいような気がしていますが、根拠はないです。
現在、練習用にズームフライ3 26cmとゲルフェザーグライド4、ゲルフェが寿命になったら履きかけのヒートレーサーや買い置きのDSトレーナーに変える予定です。
またレースにはヴェイパーフライNEX%2で挑んでみますが、はたしてコロナ禍で大会が開催されるかどうか。


ズームフライ3に関しては、生産終了となったこともあって本項で一旦終了とします。


最後に1200km走った靴裏を載せます。




さすがにアウトソールの外側がだいぶ削れています。
軸足の左側は前足部もだいぶ削れています。
最近のシューズはこの部分の素材の耐久性が増していることもあって、ここまで削れたのは久しぶりです。
削れ具合から推測すると、800kmぐらいまでは余裕で持つはずです。
引きずるような走り方や速いペースだと、もっと短いかもしれません。
ただ、それを考えても充分で普通底以上の耐久性はあると思います。



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